こんにちは トントンです。
これまで、ファンダメンタル分析・テクニカル分析・定性分析・マクロ分析・セクター分析と、個別に分析手法をご紹介してきました。
今回はそれらを“つなぎ合わせて”、**「結局どの順番で何を見ればいいのか?」**という
**“個別株購入前の思考フロー”**をまとめ、実際に架空企業で検証してみます。
🔍 個別株購入前の分析フロー【5ステップ】
以下のような流れで見ていくと、リスクを減らしながら納得のいく投資判断ができるようになります。
🧭 STEP 1|マクロ分析:「今の経済の風向きは?」
- 金利は上昇 or 低下?
- 為替は円安 or 円高?
- インフレ・デフレ状況は?
- 政策はどの業界に向いている?
👉 ここで「今の経済環境に追い風を受けている業界はどこか?」を見極めます。
🧭 STEP 2|セクター分析:「その企業が属する業界は有望か?」
- 業界全体の成長率
- ROAやEPS成長率
- シェア集中率(寡占か分散か)
👉 「その業界ごと沈まないか?」を先に確認することがポイントです。
🧭 STEP 3|ファンダメンタル分析:「会社の財務と稼ぐ力は?」
- 売上・利益の推移
- ROE・自己資本比率・PERなど
- キャッシュフロー・借入の有無
👉 利益構造・安全性・割安度を確認し、長く持てるかを見ます。
🧭 STEP 4|定性分析:「この会社、将来伸びそう?」
- 経営者の信頼性
- 商品・サービスの独自性と社会的意義
- 社風・ガバナンス・成長ストーリー
👉 「この会社を応援したい」と思えるかどうかも、個別株投資では大切な要素です。
🧭 STEP 5|テクニカル分析:「今、買うタイミングとしてどうか?」
- 移動平均線(MA)の向きやクロス
- RSI:過熱 or 冷え?
- MACD:トレンド転換?
- ローソク足で見る勢い
👉 ここで「買うか/待つか/一部買いか」をタイミング判断します。
🏢 架空企業分析で実践してみる
✅ 【買いサイン多数】株式会社エコリンクス(ECL)
業種:再生エネルギー系SaaS(電力使用データ最適化)
時価総額:500億円|上場市場:マザーズ系グロース市場
① マクロ分析
- 政策金利:1%未満(金融緩和)
- 為替:円安傾向 → 海外拡販に追い風
- 政策:脱炭素・GX推進中
✅ マクロの追い風あり。補助金や資金調達にも有利。
② セクター分析
- 業界成長率:+6.5%
- EPS成長率(業界平均):+12%
- 寡占構造:上位3社で80%
✅ 成長&寡占の“安定型グロース”セクター。
③ ファンダメンタル分析
- ROE:15%、自己資本比率:68%、PER:22倍
- 営業CF:黒字/フリーCFも安定
✅ 財務も健全で、バリュエーションも妥当。
④ 定性分析
- 経営者:エネルギー系出身、環境政策に精通
- 商品:行政・大手インフラに導入済み、解約率1%
- 社風:若手定着率90%、IR説明会も丁寧
✅ 「人・事業・将来性」3点で安心感あり。
⑤ テクニカル分析
- MA5とMA25のゴールデンクロス発生
- RSI:62(やや上向き、まだ過熱感なし)
- MACD:シグナル線を上抜け
✅ 分割エントリーに適したタイミング。
🔍 【様子見が妥当】株式会社ツーリズモ(TRM)
業種:訪日観光向けツアー予約プラットフォーム
時価総額:350億円|上場市場:スタンダード市場
① マクロ分析
- 為替:円安は追い風
- CPI上昇で国内観光費が上がっており、収益性への懸念あり
✅ プラスとマイナスが混在
② セクター分析
- 業界成長率:+3.2%、ROA:4.5%、PER:38倍(割高)
- シェア集中:中堅乱立型
✅ 市場は拡大中だが競争も厳しい
③ ファンダメンタル分析
- ROE:7%、自己資本比率:45%、フリーCFは横ばい
✅ 成長性はあるが、指標面の余裕はやや少なめ
④ 定性分析
- 経営者は現場出身で現実的だが、IRは弱め
- プラットフォームは使いやすく、UX面での高評価あり
✅ “安定しているがブレイク要素には欠ける”
⑤ テクニカル分析
- RSI50前後、MACDに方向感なく横ばいトレンド
✅ 明確なタイミングは見えず、今は静観が妥当
🚫 【投資非推奨】株式会社ビジョナリーテック(VTC)
業種:メタバース向けAIアバター生成SaaS
時価総額:150億円|上場市場:東証グロース市場
① マクロ分析
- 高金利環境下、投機的セクターは資金流出傾向
- 政策支援は皆無、むしろ風当たり強め
✅ マクロ面での逆風が顕著
② セクター分析
- PER:100倍超/EPS赤字継続/ROA:-4%
- 新興企業が乱立し、業界の淘汰すら進んでいない
✅ ストーリー先行型セクターで構造不安定
③ ファンダメンタル分析
- ROE:−15%、自己資本比率:28%、営業CFも大赤字
✅ 数字的に見て「買う理由」がない
④ 定性分析
- CEOは発信力あるが、内容が抽象的で具体性に乏しい
- 社員定着率低く、IRの透明性も低い
✅ 将来性を語るが“中身がない”タイプの危険企業
⑤ テクニカル分析
- 明確な下降トレンド/RSI:28(売られすぎ)
- MACDもマイナス乖離広がり中
✅ 技術的にも“触れてはいけない”水準
✅ まとめ:分析は「順番」で判断力が変わる
個別株投資の精度は、「どんな順番で、どこに重きを置いて分析するか」で決まります。
- 経済全体の流れ(マクロ)
- 業界の構造(セクター)
- 企業の中身(ファンダメンタル)
- 数字に出ない強み(定性)
- 今買うべきかどうか(テクニカル)
この流れで判断する習慣がつけば、「自信をもって買える企業」に出会える確率が上がります。