執筆:トントン|病院事務長/医療系国家資格保有
入院中に、こんなふうに感じたことはないでしょうか。
「ナースコールを押したのに、なかなか来ない」
「看護師さんに声をかけたいのに、近くに誰もいない」
「病状説明を聞きたいのに、すぐ対応してもらえない」
患者さんやご家族からすると、とても不安になりますよね。
入院中は、体調も生活環境も普段とは違います。
ちょっとした待ち時間でも、ものすごく長く感じると思います。
ただ、病院側の事情を少しだけ知っていただくと、「なぜすぐ来られないことがあるのか」が見えやすくなります。
結論からいうと、ナースコールにすぐ対応できない理由の多くは、看護師さんがサボっているからではありません。
多くの場合、
- 限られた人数で病棟全体を見ている
- 急変や転倒リスクなど、緊急度の高い対応を優先している
- 食事介助、排泄介助、点滴、処置、記録などが同時に重なる
- 夜間や早朝は日中よりスタッフ数が少ない
- ご家族対応や病状説明の調整も並行して行っている
といった背景があります。
この記事では、52床の病棟を例に、看護配置、勤務体制、1日のスケジュール、ナースコールが遅れやすい時間帯、患者さん・ご家族ができる伝え方について、病院事務長の視点から解説します。
※この記事は一般的な病院の人員配置や入院生活に関する解説です。実際の人員体制や対応方法は、病院の種類、病棟の役割、患者さんの状態によって異なります。個別の病状や治療方針については、入院先の主治医・看護師・相談窓口にご確認ください。
- ナースコールが遅い=看護師が無視している、ではない
- 病院の人員配置は「施設基準」で決まっている
- 52床・看護配置13対1の病棟で考えてみる
- 日中8人体制・夜間2人体制の病棟もある
- 52床病棟の1日の流れの例
- 日中も決して余裕があるわけではない
- 朝・昼・夕の食事時間帯はナースコールが重なりやすい
- 夜間は少人数で病棟全体を見る
- 「病状説明をしてくれない」と感じる理由
- 看護師不足は本当にあるのか
- 「お金を払っているのに」「これくらいいいじゃん」が現場では重くなる
- 看護師さんは「小さなミスが命に関わる」環境で働いている
- 看護師だけでなく、看護補助者や介護職との役割分担も大切
- 患者さん・ご家族ができること
- 病院側にも改善すべきことはある
- 筆者としての本音
- よくある質問
- まとめ|ナースコールの遅れには、病棟全体の流れがある
- 参考資料
ナースコールが遅い=看護師が無視している、ではない
ナースコールを押してもすぐ来ないと、
「呼んでいるのに無視された」
「軽く扱われているのでは」
「この病院、大丈夫なの?」
と感じてしまうことがあると思います。
もちろん、本当に長時間放置されていたり、危険な状態なのに対応されなかったりする場合は問題です。
その場合は、遠慮せずにもう一度ナースコールを押す、近くの職員に伝える、看護師長や患者相談窓口に相談することも大切です。
ただ、病棟ではナースコールが複数同時に鳴ることがあります。
たとえば、同じ時間帯に、
- トイレに行きたい方
- 痛みを訴えている方
- 点滴が終わった方
- ベッドから立ち上がろうとして転倒リスクが高い方
- 食事介助が必要な方
- おむつ交換が必要な方
- 急に状態が悪くなった方
- 面会中のご家族から説明を求められている方
が重なることがあります。
この場合、看護師さんは「誰から対応するか」を瞬時に判断しなければなりません。
この優先順位は、好き嫌いではありません。
安全性や緊急度で決まります。
つまり、ナースコールが遅れる背景には、病棟全体を限られた人数で見ているという現実があります。
病院の人員配置は「施設基準」で決まっている
病院には、医師・看護師・看護補助者などの配置に関する基準があります。
病院のホームページや院内掲示を見ると、
- 看護配置 7対1
- 看護配置 10対1
- 看護配置 13対1
- 看護補助配置 20対1
といった表示を見かけることがあります。
これは、ざっくり言うと「どのくらいの人数の患者さんに対して、どのくらいの看護職員を配置しているか」を示すものです。
ただし、ここで誤解しやすいポイントがあります。
たとえば「13対1」と聞くと、
「患者さん13人に対して、看護師さん1人が常にいるんだな」
と思うかもしれません。
しかし、実際には少し違います。
看護配置は、1日を通した勤務体制で考えます。
厚生局の資料でも、看護配置数の算出は、2交代・3交代に関わらず「1日3勤務帯、1勤務帯あたり8時間」を標準として算出する考え方が示されています。
つまり、13対1だからといって、どの時間帯も必ず患者さん13人に看護師さん1人がついている、という意味ではありません。
52床・看護配置13対1の病棟で考えてみる
では、52床の病棟で、看護配置が13対1の場合を例に考えてみます。
患者さんが52人入院しているとすると、
52人 ÷ 13人 = 4人
となります。
ただし、病院は24時間動いています。
看護師さん1人が24時間ずっと働くわけにはいきません。
看護配置は、1日を3つの勤務帯に分けて考えるため、
4人 × 3勤務帯 = 12人分の勤務
というイメージになります。
ここで大切なのは、「病棟に12人の看護師さんが常にいる」という意味ではないことです。
あくまで、1日を通して12人分の勤務が必要という考え方です。
この12人分の勤務を、日勤・準夜勤・深夜勤、または日勤・夜勤などに振り分けて、勤務表を作成していきます。
日中8人体制・夜間2人体制の病棟もある
細かな申し送り、薬剤確認、委員会業務、記録、休憩調整などは省いて、ざっくりした例を挙げます。
たとえば、次のような体制で勤務表を作成している病院もあるのではないでしょうか。
| 時間帯 | 勤務体制の例 |
|---|---|
| 日中勤務 9:00〜17:00 | 8人体制 |
| 夜間勤務 17:00〜翌9:00 | 同時勤務2人体制 |
| 夜間帯に関わる人数 | 交代・休憩を含めて合計4名程度 |
もちろん、実際の人数は病院によって違います。
病棟の種類、患者さんの重症度、看護補助者の配置、急性期か慢性期か、回復期か療養病棟かによっても変わります。
病院の役割や病棟の違いについては、別記事の病院の機能と役割をわかりやすく解説|急性期・回復期・慢性期の違いと転院の理由でも解説しています。
ただ、この例を見るだけでも、夕方から夜間、そして朝にかけては、かなり少ない人数で病棟を支えていることがわかると思います。
52床病棟の1日の流れの例
では、このような体制で勤務した場合、病棟の1日はどのように流れるのでしょうか。
かなり簡略化していますが、イメージとしては次のようになります。
| 時間 | 主な業務の例 |
|---|---|
| 9:00〜10:00 | 52人分の検温、状態確認、おむつ交換、点滴確認 |
| 10:00〜11:00 | 主治医の回診、カンファレンス、処置 |
| 11:00〜12:00 | 予定入院の患者さん対応、検査・リハビリ調整 |
| 12:00〜13:30 | 昼食準備、配膳、食事介助、服薬確認、交代で休憩 |
| 14:00〜15:30 | 入浴介助、処置、トイレ介助、おむつ交換 |
| 15:30〜16:30 | 午後の検温、状態確認、書類作成、カルテ記入 |
| 16:30〜17:00 | 夜勤者への申し送り |
| 17:00〜18:00 | 夕方の検温、患者さんの状態確認、点滴確認 |
| 18:00〜19:00 | 夕食準備、配膳、食事介助、服薬確認 |
| 19:00〜20:00 | 食後のトイレ介助、口腔ケア、カルテ入力 |
| 夜間帯 | 巡視、体位交換、おむつ交換、点滴確認、ナースコール対応、急変対応 |
| 6:00〜8:00 | 朝の検温、朝食準備、配膳、食事介助、服薬確認 |
| 8:00〜9:00 | カルテ入力、日勤者への申し送り |
こうして見ると、朝・昼・夕の食事時間帯が特に忙しいことがわかります。
特に朝と夕方は、夜勤帯の少ない人数で対応する時間です。
たとえば、同時勤務が2人しかいない中で、52人分の食事準備、配膳、食事介助、服薬確認、食後のトイレ介助などを行うことがあります。
もちろん、すべての患者さんに食事介助が必要なわけではありません。
自分で食べられる方もいます。
しかし、
- 食事介助が必要な方
- むせ込みやすい方
- 食事中の見守りが必要な方
- 薬を確実に飲めているか確認が必要な方
- 食後すぐにトイレへ行きたい方
- ベッドへ戻る介助が必要な方
が同じ時間帯に重なると、現場は一気に慌ただしくなります。
その中で、あちこちからナースコールが鳴ります。
「トイレに行きたい」
「点滴が終わった」
「痛い」
「眠れない」
「ベッドから起きたい」
「家族が来たので話を聞きたい」
こうした声が、同じ時間帯に重なることがあります。
さらに、面会に来たご家族から声をかけられることもあります。
「今の状態を教えてほしい」
「先生と話せますか?」
「退院はいつ頃ですか?」
「さっきナースコールを押したのに来なかったんですが」
ご家族の心配も当然です。
ただ、食事介助や排泄介助、点滴確認をしている最中に複数の用件が重なると、看護師さんがすぐに対応できない場面が出てきます。
日中も決して余裕があるわけではない
「夜が大変なのはわかった。でも日中は8人いるなら余裕があるのでは?」
と思う方もいるかもしれません。
しかし、日中は日中で業務量がかなり多くなります。
日中には、
- おむつ交換
- トイレ介助
- 点滴
- 採血
- 処置
- 入浴介助
- 検査への送り出し
- リハビリ調整
- 主治医の回診対応
- 予定入院の受け入れ
- 退院準備
- カルテ記入
- 書類作成
- ご家族対応
などがあります。
さらに、予定外の入院や急変があった場合には、状況は一気に変わります。
誰かの状態が急に悪くなれば、そこに複数のスタッフが入ります。
すると、他の患者さんへの対応はどうしても遅れやすくなります。
これは看護師さんがサボっているからではありません。
限られた人数の中で、命に関わる対応、転倒リスクの高い対応、痛みや呼吸苦など緊急性の高い対応を優先しているためです。
朝・昼・夕の食事時間帯はナースコールが重なりやすい
ナースコールが遅れやすい時間帯のひとつが、食事の時間帯です。
食事の時間には、単に食事を配るだけではありません。
患者さんによっては、
- 食事姿勢の調整
- 配膳
- 食事介助
- むせ込みや誤嚥への注意
- 服薬確認
- 食後のトイレ介助
- 口腔ケア
- ベッドへ戻る介助
- 血糖測定やインスリン対応
などが必要になります。
特に高齢の患者さんが多い病棟では、食事介助と排泄介助が重なりやすくなります。
「食べ終わったからトイレに行きたい」
「薬を飲ませてほしい」
「むせた」
「ベッドに戻りたい」
「食事をこぼしてしまった」
こうしたナースコールが一気に増えます。
そのため、朝・昼・夕の食事時間帯は、看護師さんや看護補助者さんが非常に忙しくなりやすい時間です。
夜間は少人数で病棟全体を見る
夜間は、日中よりスタッフ数が少なくなります。
夜は患者さんが寝ているから楽、というイメージを持たれることもありますが、実際はそう単純ではありません。
夜間にも、
- トイレ介助
- おむつ交換
- 体位交換
- 点滴確認
- 痛みや不眠への対応
- 転倒予防
- 巡視
- 急変対応
- 朝食前の準備
などがあります。
夜勤帯で急変や転倒が起きると、少人数の中で対応しなければなりません。
1人の患者さんに時間がかかると、他のナースコールへの対応が遅れやすくなります。
このため、夜間や早朝にナースコールを押しても、すぐ来られないことがあります。
ただし、痛みが強い、息苦しい、胸が苦しい、転倒した、出血している、意識がぼんやりする、点滴の異常があるなどの場合は、遠慮せずナースコールを押してください。
「病状説明をしてくれない」と感じる理由
患者さんやご家族から、
「病状説明をもっとしてほしい」
「看護師さんに聞いても、はっきり答えてもらえない」
「主治医と話す機会が少ない」
という声を聞くことがあります。
これも、現場ではよくある悩みです。
ただ、病状説明には注意が必要です。
看護師さんが答えられることもありますが、診断、治療方針、今後の見通し、転院や退院の判断などは、主治医からの説明が必要になることがあります。
また、病院のホームページに診療科目が書かれていても、入院中にその科の専門医が主治医になるとは限りません。
このあたりは、別記事の教えて?病院の診療体制・医師体制|診療科目と入院主治医の見方で詳しく解説しています。
病状説明を聞きたいときは、ナースコールでその場で聞くよりも、
「主治医の先生から説明を聞きたいのですが、時間を調整できますか?」
「家族も同席したいので、説明の日時を相談したいです」
と伝える方がスムーズです。
看護師不足は本当にあるのか
「病院は人が足りないと言うけど、本当にそんなに足りないの?」
と思う方もいるかもしれません。
看護職員数そのものは、長期的には増えています。
しかし、現場の不足感は単純な人数だけでは説明できません。
厚生労働省の資料では、看護職員の需給状況は都道府県や二次医療圏ごとに差があり、訪問看護などでは需要の増大が大きいことが示されています。
つまり、全国で人数が増えていても、地域や領域によっては「足りない」が起こります。
また、日本看護協会の「2025年 病院看護実態調査」では、2024年度の離職率は、正規雇用看護職員11.0%、新卒採用者8.4%、既卒採用者16.1%と報告されています。
採用して終わりではなく、定着してもらうことも大きな課題です。
現場で起きているのは、
- 人を採用しても辞めてしまう
- 夜勤に入れる人が限られる
- 子育てや介護で働き方に制限がある
- 地域によって採用しにくい
- 急性期、回復期、慢性期、訪問看護などで必要な人材が違う
- 看護師だけでなく看護補助者の確保も難しい
といった複合的な問題です。
単に「看護師の人数を増やせばすぐ解決」というほど簡単ではありません。
「お金を払っているのに」「これくらいいいじゃん」が現場では重くなる
入院中の患者さんやご家族からすると、
「入院費を払っているのだから、すぐ対応してほしい」
「これくらいお願いしてもいいじゃないか」
「ナースコールを押したらすぐ来てほしい」
と思うこともあると思います。
その気持ちは、決しておかしなものではありません。
入院中は不安ですし、困っているからナースコールを押しているのです。
ただ、病棟の流れを見ると、ひとつひとつの「これくらい」が積み重なって、かなり厳しい状況になることがあります。
52人の患者さんを限られた人数で見ている中で、
「少しだけ話を聞いてほしい」
「少しだけ待っていてほしい」
「少しだけ手伝ってほしい」
「少しだけ説明してほしい」
が同時に重なると、看護師さんの手は足りなくなります。
病院の入院医療は、ホテルのように患者さん一人ひとりへ専属スタッフがつく仕組みではありません。
保険診療の仕組みや病院経営の考え方については、別記事の結局、病院経営は儲かる?〜絶対に行ってはいけない、お金儲け病院の見分け方〜でも触れています。
もちろん、患者さんやご家族が遠慮しすぎる必要はありません。
必要なことは伝えて大丈夫です。
ただ、病棟では自分以外の患者さんにも、同じように不安や痛み、介助の必要性があるということを、少しだけ知っていただけるとありがたいです。
看護師さんは「小さなミスが命に関わる」環境で働いている
看護師さんの仕事は、単に忙しいだけではありません。
点滴、薬、食事、転倒、呼吸状態、意識状態、排泄、感染対策など、細かな確認が必要な場面がたくさんあります。
小さな見落としが、患者さんの命に関わることもあります。
そのため、看護師さんは常に大きなプレッシャーの中で働いています。
ナースコール対応が遅れてしまうことがある一方で、看護師さん自身も、
「早く行かなければ」
「でも今この患者さんから離れられない」
「この対応を間違えると危ない」
「次のナースコールにも行かないといけない」
という状況で動いています。
正直に言えば、病棟によっては、いわゆるブラックに近い厳しい勤務環境になってしまうこともあります。
患者さん一人ひとりの病状に合わせて、安全に看護すること。
そして、病院で少しでも過ごしやすくなるように配慮すること。
どちらも大切です。
しかし、現場の人数や時間には限界があります。
医療上の安全を守りながら、すべての患者さんの生活上の希望に細かく応えることには、どうしても限界があるのです。
看護師だけでなく、看護補助者や介護職との役割分担も大切
病棟では、看護師さんだけでなく、看護補助者さんや介護職員さんが患者さんの生活を支えている場合もあります。
ただし、すべての業務を誰でもできるわけではありません。
医療行為にあたること、看護師の判断が必要なこと、看護補助者や介護職が対応できることは分けて考える必要があります。
たとえば、食事介助や移動介助、清潔ケア、環境整備などは看護補助者や介護職が関わることがありますが、薬や点滴、医療的な判断が必要な場面では看護師の対応が必要です。
このあたりの整理は、別記事の介護職ができる医行為以外のケアとは?厚労省ガイドラインを徹底解説でも解説しています。
人手不足の病棟では、看護師、看護補助者、リハビリ職、相談員、医師などが役割分担しながら支えています。
それでも、食事時間や夜間帯のように業務が集中する時間は、どうしても手が足りなくなることがあります。
患者さん・ご家族ができること
ここまで読むと、
「じゃあ、患者側は我慢するしかないの?」
と思われるかもしれません。
もちろん、そうではありません。
必要なときはナースコールを押して大丈夫です。
特に、
- 痛みが強い
- 息苦しい
- 胸が苦しい
- 転倒した
- 出血している
- 意識がぼんやりする
- 点滴の異常がある
- 強い吐き気がある
- 体調が急に変わった
といった場合は、遠慮しないでください。
一方で、ナースコールを押すときに少し工夫すると、対応がスムーズになりやすいです。
たとえば、
「トイレに行きたいです」
「痛みが強いです」
「点滴が終わりました」
「息が苦しいです」
「家族が病状説明の時間を相談したいです」
というように、用件を短く伝えると、緊急度を判断しやすくなります。
また、病状説明や退院相談のように時間が必要な内容は、その場で解決しようとせず、
「いつ相談できますか?」
「家族が来られる時間に説明をお願いできますか?」
「地域医療連携室や医療相談室に相談できますか?」
と聞くと、病院側も調整しやすくなります。
入院後すぐに転院の話が出て不安な場合は、別記事の入院したばかりなのに転院と言われたら?理由と家族が確認すべきことも参考になります。
退院後に「病院に行くべきか」「何科を受診すべきか」で迷う場合は、「この症状、病院に行くべき?」と「何科を受診すべき?」迷ったときの相談ガイドもあわせてご覧ください。
病院側にも改善すべきことはある
ここまで病院側の事情を説明してきましたが、だからといって、すべてを患者さんや家族に理解してもらえばよい、という話ではありません。
病院側にも改善すべきことはあります。
たとえば、
- ナースコールが多い時間帯に人員を厚くする
- 食事・排泄介助のピーク時間を把握する
- 看護師と看護補助者の役割分担を見直す
- 病状説明の時間を事前に案内する
- 家族への説明不足を減らす
- 患者さんが不安になりやすい場面を共有する
- 現場スタッフに無理をさせすぎない
- 記録や書類業務を効率化する
- 忙しい時間帯にご家族対応が集中しないよう調整する
といった取り組みは必要です。
看護師さんの頑張りだけで回す病棟運営は、長続きしません。
患者さんにとっても、スタッフにとっても、安心できる仕組みにしていくことが大切です。
筆者としての本音
私は今は事務方の立場ですが、病棟で働く看護師さんや看護補助者さんの姿を見るたびに、本当に頭が下がります。
ナースコールが鳴り続ける中で、食事介助をし、排泄介助をし、点滴を確認し、記録を書き、ご家族対応をし、急変があればすぐに動く。
そのひとつひとつが、患者さんの安全に関わっています。
もちろん、病院側にも改善すべきことはあります。
説明不足や対応の遅れがあれば、病院として見直す必要があります。
ただ、現場で働くスタッフが「何もしていない」「呼んでも来ないだけ」と思われてしまうのは、少し違います。
ナースコールが遅れる背景には、こうした病棟全体の流れがあります。
患者さんやご家族にとっても、病院側にとっても、お互いの立場を少し知ることで、関わり方が変わるかもしれません。
よくある質問
Q. 13対1なら、看護師1人が患者13人だけを見るのですか?
いいえ。
13対1は、常にその時間帯で患者さん13人に看護師さん1人がいるという意味ではありません。
看護配置は、1日を通した勤務体制で考えます。
そのため、日中と夜間では実際の受け持ち人数が変わります。
Q. ナースコールを押すのは迷惑ですか?
必要なときは押して大丈夫です。
特に、痛み、息苦しさ、転倒、出血、点滴の異常、急な体調変化などは遠慮しないでください。
ただし、緊急でない内容は、用件を短く伝えると対応がスムーズになります。
Q. 何度押しても来ないときはどうすればいいですか?
まずは再度ナースコールを押してください。
それでも対応されない、危険を感じる、繰り返し困っている場合は、病棟スタッフ、看護師長、医療相談室、患者相談窓口などに相談しましょう。
Q. 家族が病状説明を聞きたいときは?
その場で急に説明を求めるよりも、説明の日時を調整してもらう方がスムーズです。
「家族で説明を聞きたいので、主治医の先生と話せる時間を調整できますか?」
と伝えるのがおすすめです。
Q. 看護師さんに言いにくいことは誰に相談すればいいですか?
病棟の看護師長、医療相談室、地域医療連携室、患者相談窓口などに相談できます。
退院、転院、医療費、在宅サービス、介護保険などの相談は、医療相談員や地域医療連携室が関わることもあります。
まとめ|ナースコールの遅れには、病棟全体の流れがある
ナースコールを押しても看護師さんがすぐ来ないと、不安になります。
その不安は当然です。
一方で、病棟では限られた人数のスタッフが、複数の患者さんを同時に支えています。
食事、排泄、点滴、処置、記録、急変対応、家族対応などが重なると、どうしてもすぐに行けない場面があります。
特に、朝・昼・夕の食事時間帯、夜間、早朝は、ナースコールが重なりやすい時間帯です。
大切なのは、患者さんやご家族が我慢することではありません。
そして、病院側が「忙しいから仕方ない」で終わらせることでもありません。
患者さん側は、困っていることを具体的に伝える。
病院側は、説明不足や対応の遅れを減らす仕組みを作る。
その両方が必要です。
病院と患者さん・ご家族は、どちらが偉いという関係ではありません。
同じ目的は、患者さんが安全に、少しでも安心して治療や療養を受けることです。
この記事が、病院の現場を少しでも知るきっかけになれば嬉しいです。
参考資料
「2025年 病院看護実態調査」結果|日本看護協会ざっくりと発信していきたいと思います。


