はじめに
高齢化が進む日本社会において、介護職員の役割はますます重要になっています。しかし、介護現場では「これは医行為にあたるのか?」「介護職が行ってもよいのか?」といった判断に迷う場面が多く存在していました。そんな中、厚生労働省は令和6年度に『原則として医行為ではない行為に関するガイドライン』を策定し、介護職員が安心して業務を行えるよう支援しています。
ガイドライン策定の背景
超高齢社会における介護現場の課題
日本は世界でも類を見ない速さで高齢化が進行しており、介護サービスの需要が増加しています。一方で、医師や看護師などの医療職の人手不足が深刻化し、介護職員が医療的ケアを担う場面が増えています。
しかし、介護職員がどこまでのケアを行ってよいのか、その範囲が明確でなかったため、現場では以下のような課題が生じていました:
- 業務範囲の不明確さ:介護職員が行ってよいケアと医行為の線引きが曖昧で、業務に不安を感じる。
- 責任の所在の不明確さ:万が一の事故やトラブルが発生した際、責任の所在が不明確である。
- 研修や教育の不足:介護職員が適切な知識や技術を習得するための研修体制が整っていない。
これらの課題を解決し、介護職員が安心して業務を行えるようにするため、厚生労働省はガイドラインの策定に至りました。
ガイドラインの発表時期
『原則として医行為ではない行為に関するガイドライン』は、令和6年度(2024年度)の老人保健健康増進等事業の一環として策定され、2025年5月19日に厚生労働省から正式に通知されました。この通知は、介護保険最新情報Vol.1385として発出され、全国の自治体や介護事業者に周知されています。
ガイドラインの全文は、株式会社日本経済研究所の公式ウェブサイトにて公開されています。
ガイドライン策定前の現場の困りごと
ガイドラインが策定される前、介護現場では以下のような困りごとが報告されていました:
- 医行為と非医行為の区別が難しい:例えば、インスリン注射の準備や血糖値の測定など、介護職員が行ってよいのか判断が難しい行為が多く存在していた。
- 業務の範囲が施設ごとに異なる:施設や事業所によって、介護職員が行ってよい業務の範囲が異なり、統一性がなかった。
- 研修や教育の機会が不足している:介護職員が必要な知識や技術を習得するための研修や教育の機会が不足していた。
これらの課題は、厚生労働省の検討資料や現場からのヒアリングなどを通じて明らかになり、ガイドライン策定の必要性が高まりました。
ガイドラインの具体的な内容
令和6年度版ガイドラインでは、介護職員が実施可能な“医行為ではない”とされる行為について、詳細な分類と実施上の留意点が明示されています。
🔹 バイタルサインの測定
- 体温、血圧、脈拍、SpO₂の測定
- 血糖値の確認(持続血糖測定器の数値読み取り)
🔹 投薬・注射の補助
- インスリン注射器の準備・片付け(注射そのものはNG)
- 点眼薬・軟膏の塗布・内服薬の服薬介助
- 坐薬の挿入補助(条件付き)
🔹 医療機器の補助
- 経管栄養の準備・後片付け
- 吸引器・酸素療法機器の準備・洗浄
🔹 排泄・清潔ケア
- 尿やストマ排泄物の処理
- 陰部洗浄・浣腸(リスク管理が必要)
- 口腔ケア、爪切り、耳掃除など日常的ケア
🔹 見守りと記録
- 観察記録・異常の早期発見と医療職への報告
- ケア内容の記録と共有
各方面のリアクション(現場の声・SNS含む)
1. 介護現場からの声
- 「安心して仕事ができるようになった」
「グレーゾーンが多くて怖かったけど、これで一歩踏み出せる」という声が多数。 - 「職場内マニュアルに反映した」
各事業所でマニュアル見直しやOJT導入が始まっている。
2. 医療職からの反応
- 「タスクシフトの明文化はありがたい」
医療職の業務軽減につながると評価。 - 「リスクが高い業務もあり、教育がカギ」
一部には、安易な業務拡大によるリスクを懸念する声も。
3. 自治体・行政機関の対応
- 地域ケア会議や研修事業で本ガイドラインを活用。
- 東京都や大阪府では研修コンテンツの整備が始まっている。
4. 家族・利用者からの反応
- 「介護の質が上がるのでは」と期待の声
- 「安全性は大丈夫?」という不安の声も一定数
SNSの反応(X・Facebook・介護系掲示板など)
- 「このガイドラインで、ようやく曖昧な業務から解放された」
- 「看護師不足の今、これは現場にとって大きな支え」
- 「現場が全部やらされるだけにならないか心配」
- 「施設長からガイドライン説明があった。ちゃんと職員にも研修あるらしい」
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最後に|このガイドラインが意味すること
このガイドラインは、介護職の役割を明確化し、現場の不安を軽減しつつ、チームでの連携を強化するための“共通言語”となるものです。
特に、介護・医療・行政の三者が連携する地域包括ケアにおいて、その重要性は今後さらに高まるでしょう。